こんにちは、あとかです。
私はずいぶん昔、九州の熊本県に住んでいました。
生まれて初めて、親元を離れ、一人暮らしを始めた頃です。
ある日の昼間、(おそらく平日だったと思います)当時私が住んでいたワンルームのアパートの呼び鈴が鳴りました。
私は、チェーンロックはかけたままドアを開け、隙間から見てみると、2人の若い男女が立っていました。
宗教の勧誘だということは、すぐにわかりました。
私は大抵のセールスや勧誘をできる限り最大限「優しく」追い返すようにしています。
いらぬ恨みを買っても仕方がありませんので。
「すいません。興味がありませんので、ありがとうございました。」
と、いつものようにお礼を言いながらドアを閉めようとすると、その隙間に足を差し込まれ阻止されてしまいました。
なんと、女性の方に、です。
「今悩んでいることはないですか?幸せについて考えたことはありますか?」
穏やかながら、圧の強い声で語りかけながら、その女性は肩にかけたカバンから何かを出そうとします。
男性の方は、何もせず微笑んでいるような気配です。
正直言って、私は怖くなって、「いやいや、結構です!」と強めに言ってしまいました。
女性は、私の突然の剣幕に驚いたようで、少し後退りしました。
その隙に、私はドアをバタンと閉め、「ありがとうございました!」と声をかけました。
「それでは、チラシだけでも入れておきますね」
ドア越しに先程の女性の声が聞こえ、新聞受けに何かを入れる音がしました。
やがて、2人の遠ざかっていく足音が全く聞こえなくなっても、私はその「何か」を確認する気にはなれませんでした。
しばらく経ってから、新聞受けを確認すると、言われていた通り、数枚のチラシが入っていました。
やはり、とある新興宗教のものでした。
「修行」とか「救済」とか、そういったことが書かれていたと思いますが、内容ははっきりとは覚えていません。
ただ、当時の私は、自分とそれほど変わらない年齢の彼らが、何故、新興宗教にハマるのかすごく不思議でした。
また、彼らの真剣過ぎる顔も忘れられません。
その後、彼らは2度と訪問して来ませんでした。
けれども、それから数年後、その宗教団体のことを日本中の誰もが知ることになります。
そして、とんでもないテロ事件を起こすのです。
その団体は、東京都内の主要地下鉄車両内で、同時多発的に毒ガス攻撃を仕掛けました。
ご存知の通り、大変ひどい事件で、被害は甚大。
今なお、多くの方が後遺症に苦しんでいらっしゃいます。
その事件の日は、26年前の今日のことです。
あの日、私の部屋を訪ねてきた同世代の彼らは、今、どうしているのでしょうか?
「幸せ」なのでしょうか?
今回は、この辺で。
それでは、またお越しください。
気が向いた方は、読者登録をおねがいします!